競馬の名場面 最強馬

最強

最強馬が勝つことだけが、名場面というわけではありません。敗れることもまた一つのドラマです。1983年に新潟競馬場でデビューしたシンボリルドルフは、翌年には皐月賞・日本ダービー・菊花賞とクラシックレースを総なめにし、しかも史上初めて無敗のまま3冠馬となりました。菊花賞を制した後、シンボリルドルフはジャパンカップへと駒を進め、前年の3冠馬ミスターシービーと雌雄を決するとともに、外国馬を迎え撃つこととなりました。

先行抜け出しの横綱相撲で他馬を圧倒してきたシンボリルドルフに対し、ミスターシービーは後方からまくり気味に上位へと進出し、早め先頭からそのままゴールまで押し切るという、好対照なレース振りで人気を博していました。しかし、この2頭をあざ笑うかのごとく、カツラギエースがジャパンカップを逃げ切り、2頭の3冠馬を差し置いて日本で初めてのジャパンカップホースとなりました。

暮れの有馬記念を制したシンボリルドルフは、翌年春の天皇賞でもミスターシービーに印籠を渡し、秋の天皇賞で春秋連覇を狙うこととなります。古馬になって更に凄みを増し無敵かと思われていたシンボリルドルフでしたが、休み明けで気負っていたせいか、ややかかり気味に先行集団へと取り付き、直線先頭に立つも伸び脚を欠き、伏兵ギャロップダイナに差し切られ東京競馬場は静まり返りました。皇帝シンボリルドルフが、日本馬同士の対戦で初めて見せた力負けの瞬間でした。